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香川医科大学の献体18年

 

香川医科大学

 

香川医科大学は、国立医科大学の最終校として、昭和53年10月1日に国立学校設置法の改正により、山梨医科大学、福井医科大学とともに開学した。基本理念を「人間性に対する深い思索と医学・医術における創造をモットーとし、しかも最近の医学の進展に柔軟に対応しうるユニークな医科大学を創立し、人類の福祉・医学の向上に貢献するとともに、地域医療の発展充実に寄与する」としている。これは、地域医療の要望と時代の要請により創設され、医学の発展と地域医療の向上、その充実に寄与しようとする本学の目的・使命を表している。
こうして時代の要請また地域の要望として香川県に医学部を設置されるに伴い、実習用の遺体の確保が急務であることが県の有識者に認識され、その後、設立準備段階の昭和53年6月に最初の献体篤志家として、故前川旦代議士他6名の方々が集まった。そして、翌年の昭和54年3月30日に、財団法人香川医科大学設置協力会の呼びかけによって県内の献体篤志家による「香川医科大学白菊会」が会員数30余名をもって結成された。
本学においても開学当初の解剖学実習は他の新設医科大学の例にもれず、満足な遺体収集ができず、実習体不足を極めていた。そのため大学として事態の打開を計るべく、解剖学講座を中心に地元香川県、県医師会など関係各位へ協力を依頼、県内の老人施設へ出向いての説明会などを行った。また、特に香川医科大学白菊会会員自身による積極的な献体啓蒙活動、草の根運動などの展開により会員数を徐々にではあるが増加させることができた。これらの献体啓蒙活動の成果として、設立8年目に会員数が1,000名を超え、近年は毎年150名前後の方が入会され、現在延べ会員2,300名、生存会員1,600名までに発展している。この結果、昭和56年に生徒8人に1体の割合で行われた解剖学実習も平成2年度から生徒2名に1体の割合にまでになった。なお、この解剖学実習における篤志体比率100%は、現在も続いている。
医学專門課程の教育は、解剖学から始まり、解剖学実習なくして医学教育は始まらないといわれている。言うまでもなく、この実習は全て御遺体を用いて行われ、その御遺体は医学発展のために自らの意志によって本学に献体されたものである。医学は個々の生命体を対象とする学問であり、医学生はその貴重な資料として初めて御遺体に接することとなる。解剖学では医学生に生命の尊厳と医の倫理を理解させ医師たるべきものの使命感を自覚させるため、医学の教育研究の最も重要な基礎となる学問として、人体の精巧な構造や複雑な機能などを理解することを課すこととしている。
医学を志す者は、こうした解剖を通して、献体された方々の篤志にふれ、生命の尊厳について学ぶこととなる。本学の教職員、医学生は、多くの方々の篤志を無にしないよう肝に銘じなければならない。このような崇高な篤志の方々である白菊会会員の皆様に心より感謝と敬意を表するものである。
(第一解剖学教授 竹内義喜)

 

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